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「なぁ~、珪~」
「………」
「なぁ~ってば、珪~」
道の途中、ずっと話しかける遼。
元々、人と話すのが好きじゃない珪からすれば、
鬱陶しくて仕方が無い。これ以上無い苦痛だ。
「なぁ~、なぁ~」
そんな珪の心境など知る由も無く、遼は話かける。
「…なんだ」
あまりの鬱陶しさに、仕方なく返答。
勿論、必要最小限の。
「け~い~く~ん~」
珪の声が小さかったせいか、遼は更に大きな(鬱陶しい)声で、
しかも“くん”まで付けて珪を呼ぶ。
「鬱陶しい。“なんだ”と言ったのが、聞こえなかったのか?」
幼馴染の男に“珪くん”なんて呼ばれて、余程気持ち悪かったのか、
珪は、珍しく少し怒ったような声でキツめに言い放った。
「そ、そんな怒るなよぅ~」
「やめろ、気色悪い」
スパっと切る。サラっと流す。
美しいスルーの模範ですね、はい。
「…んで、なんだ?本題は」
珪が、やっと本題に戻す。
二人だと、どうにも突っ込みに時間がかかる。
「あ、そうそう。寄るトコって、どこさ?」
やっとまともな会話が始まった。
「…ん?あぁ、まぁな。行けば分かる」
「そっか~」
まともな会話が終わった。一瞬で。
