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「ね、一緒に帰ろ」
いつもと同じように、晴香が声をかけてきた。
「……今日は、遠慮しとく」
珪は、今日はやりたいことがあったので
軽く晴香の誘いを断った。
晴香は肩を落として教室を出て行く。
珪が“やりたいこと”なんて、明日はきっと台風だ。
「……今日は、晴れてるな…」
呟いてみた。一人で。
相変わらず、無駄に広い校庭をひたすら歩く。
晴れていると、夕日が結構綺麗に見える。
校庭というのも、悪くないもんだ。
「よぉ、待てよ」
不意に、誰かに声をかけられた。
晴香ではない。男の声だ。
「……お前か」
振り返った先、目に映ったのは遼だった。
「今、帰りか?なぁ、たまには一緒に帰ろうぜ」
遼は、にこにこしながら誘ってきた。
どうしてこうも、用がある時に誘いが多いのか…。
「……俺、寄るトコあるから…」
珪は、少し顔を歪めて断る。
しかし、遼は晴香ほど素直な奴ではない。
「なら、俺も付き合うからさ」
調子良く勝手なことをぬかして、珪の隣を歩く。
実に素早い。
「…お前、めちゃくちゃだ」
明らかに迷惑そうな表情で、珪は歩くスピードを上げた。
「いいって、いいって」
お前がよくても、相手は嫌がっているのだ、遼よ。
