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「おぅ、珪。ギリだぜ~?テスト当日だってのに、余裕だなぁ?」
席に着いた珪に、真っ先に声をかけてきたのは
小学校時代からの友人、長谷部 遼(ハセベ リョウ)。
成績の方は、珪の半分くらい。…絶望的だ。
「…お前と一緒にするな」
珪は、完全に遼を見下した笑みで言い放つ。
割と仲が良いからか、遼と話をする時は、少しだけ口数が増える。
「あ、ひっでぇ。いいよなぁ、天才くんは」
「…別に。天才って訳じゃない」
“天才”という言葉に、少し顔をゆがめる珪。
そういうとこ、まったく鈍い遼は、気づくよしも無かったが。
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「ねぇ、珪?」
「…ん?」
いつもの光景だ。
屋上、珪、弁当、晴香。
「テスト、どうだった?」
今日も、相変わらずに晴香が話を振る。
「……その質問…意味、あるのか?」
珪が嫌味っぽい言葉を投げかける。
本人、そのつもりはないんだろうが。
「自信たっぷりなのねぇ~?」
平均レベル、一般ピーポーな晴香は、引きつった笑顔で応える。
「…当然だ」
そんなこと、知ってか知らずかスルーする。
「へ、へぇ~…すごいね」
晴香は、珪のことを心底恨めしく思った。
勉強ばかりでなく、運動だってできる。
ルックスだって、悪くない…いや、かなりいい方だろう。
まさに非の打ち所の無い人って感じだ。
一般人の理想そのものなのだ。
「…珪が、遠いところに居るみたいだよ」
そっと、口に出してみた思い。
時が経つに連れて、どんどん離れて行ってしまうような気がしていた。
「…? 手、届く位置だろ?」
ぽんと肩を叩かれた。
珪の言ってる距離は、晴香の思う距離とは意味が違うのだが…
「……そうだね♪」
晴香には嬉しかった。
ほんの一言だけど、心が軽くなれた気がした。
珪にそんなつもりは全く持ってありはしなくても。
嬉しかったのだ。
