数日後、進路相談件三者面談をする事になった。


結局来たのはお母さんだけ。
お母さんは教室の外の椅子に座りながらソワソワしている。


「どーしたの、お母さん」


「だって緊張するじゃない! 将来、まいちゃんのお婿さんになる人でしょ? しかも、先生かっこいいじゃない。 ああー緊張する」


「そういえば、去年も緊張してたね」


「駄目なの、お母さん。 イケメンを見ると舞い上がっちゃって。 できれば“惜しい!もうちょっとなのになあ”って思うような顔の人にしてほしいもんだわ!」


それってどんな顔なんだろう。


「勝男くんも年々かっこよくなっていくし、お母さんいっつも緊張するのよー。 昔から見てる顔の筈なのに」


お母さんはブツブツと言っていた。
名前を呼ばれて、教室に入る。


「お久しぶりです、倖田先生。 先生の事は娘からよく聞いてます。 今日はよろしくお願いします」


「あ、はい…。 こちらこそ、よろしくお願いします」


二人が頭を下げあったので、私も便乗して、頭を下げた。


「ところで、進路は決まったのか?」


「はい!」


言ってみろ、と言わんばかりの顔をする先生。
私は必要も無いのに席を立った。


「私、先生になりたいんです!」


先生とお母さんの頭にハテナマークが飛ぶ。


「侍先生みたいな、日本史の先生に!」


二人はボー然としている。
開いた口が閉まらないみたい。


「えっと…本気か?」


「超本気!」


私は胸を張ってそう答えた。