しばらくすると、誰かの携帯の音が聞こえる。
この着うたは俺が設定したやつじゃない。
「あ、私だー。 あっ、侍先生っ!」
「出るんだったら廊下いけよ」
「あーい! ちょっとラブラブ電話してきまっす!」
そう言って、部屋を抜け出す。
美智子ちゃんは何故か嬉しそうに笑っている。
「どうしたの?」
「ううん、まいちゃんてほんと、倖田先生が好きなんだなって思って」
毎日、ノロケ話や愚痴を聞かれてるけどね。
「あ、ごめんなさい!」
「…え? なんで謝るの?」
「えーっと、だって」
モゴモゴと、口を動かしている美智子ちゃん。
まさか、まだ俺がまいまいの事…。
「昔さ、まいまいがセミをつかまえてきてさ」
「…え? …う、うん」
「毎日ミンミン泣くし、うるせえのなんのって」
まあ、セミだし仕方無いんだけど。
「でもセミってさ、寿命短いじゃんか。 夏休みまだまだ残ってる8月の頭くらい、だったかな。 飼ってたセミが、死んじゃって
もう、その日からまいまいの泣き声に変わって、ずーっと泣いてんの。
なんかそれがセミの泣き声より、スゲー嫌だった」
好きな女の子が、ずっと泣いてる。
それが子供ながらに凄い嫌で。
「だから、セミの墓を作ったんだよ、公園に。 安心して天国に行けないだろうから、もう泣くなって言ったら、それからウソみたいに泣かなくなって」
美智子ちゃんはただ、俺の話を聞いている。
ほんとはこんな話、聞きたくないだろうけど。
でも、聞いてほしい。


