「じゃ、良かったら俺の話聞いてもらえますか?」
「え? …ああ、いいけど」
森本に促されるがまま、進路相談室に向かった。
「なんか、最近悩んでるんすよ」
森本がそう言った。
「森本がか?」
「いや、まいまい…姫条のヤツです」
悩んでる?姫条が?
「『侍先生に好かれてる自信が無い』って」
…なんだそれ。
「毎日聞かされてるんですよ。 なんとかしてくださいよ」
「ああ…それはすまなかったな」
なんだ、この会話。
「先生、俺はもう…アイツの事は妹みたいな存在にしか思ってないっすよ」
「へ?」
「それが気になってたんじゃないんですか?」
…見抜かれてる。
やっぱ油断ならない奴だ、森本は。
「俺は今、吉川美智子ちゃん一筋ですから」
ニカッと笑う森本。
その笑顔に嘘は無いようで、なんとなく安心できた。
「俺の妹、泣かさないでくださいよ」
そう言って、手を振って進路相談室を出て行った。


