「あ、そうそう。 今度進路相談あるっていってただろ? お前、日時の希望出してないだろ? 早く出しとけよ」


全然、恋人同士っぽくないけど。
学校でも外でも、あんまり変わらない。


別にそれでいいんだけど。


「はーい。 …あ!」


「なに」


「よく考えたら、先生って私の親にはじめて会うんじゃないですか? もしかして…『娘さんを僕に下さい』的な!?」


「アホか。 去年会ってるだろ」


「ち、違う! 精神的な面でってことー!」


「意味分かんない」


先生は私に背を向けてスタスタと歩き出す。
私はそれを早足で追いかけていく。


「去年はお母さんだけだったけど、今年はお父さんも呼んで両親共っていうのはどうですか?」


「別にいいけど、お前ん家のお父さんあんまり家に帰ってこないんだろ」


「娘の一大事って言えばなんとか!」


「ああ…お前の進路が危ういって思えば」


「だからそういう意味じゃなくってー!」


先生はふりかえって、出席簿の底をオデコに刺すように当てた。


「痛くないけど、なんかウザい」


「お前、ほんとにノー天気だな」


「ふえ?」


ノー天気って…。
先生の眉と眉の間にはシワが三本ほど出来ている。