「この間はごめんなさい!」


わたしは大輔君に向かって深々と頭を下げた。

一昨日も何度も謝ったけど、こうして顔を見るとまた自然とそうしてしまった。


「えっ……。いや、なんでヒナちゃんが謝んの? オレの方こそ、怖がらせたみたいで……ごめんな?」


そう言って、大輔君は頭を下げたままのあたしの顔を覗き込んだ。

その表情は本当に申し訳なさそうな顔で……

ああ……この人って見た目の軽い印象と違って、ほんとに人が良いんだなぁ……なんて思ってしまう。


あたしは顔を上げて、二人でほんのちょっと照れくさそうに微笑み合った。



「そうだ。大輔に教えてもらえば?」



あたしの背後からそんな蓮君の言葉が聞こえた。


「え?」


「大輔、理系だから。数学得意なんじゃない?」


「ええ! そうなの?」


大輔君はあたしと蓮君の会話を理解できないようで、キョトンとした顔をしている。

あたしは大輔君に、次の数学の授業のことについて説明した。