「おい? 大丈夫か?」


蓮君はあたしの顔の前で真っ赤に染まった手を振る。


その赤がだんだんぼやけてきて……


「大丈夫……じゃない」


あたしはポツリとつぶやいて意識を手放した。


倒れかけたあたしを抱きかかえてくれたのは、きっと蓮君。


遠くでサイレンの音がする。

蓮君の為に呼ばれたはずの救急車にまさか自分が乗るハメになるなんて……。


事実は小説より奇なり……。


なんて、よく言ったもんだと


あたしは蓮君の腕の中でそんなことを考えていた。