「……で。付き合うの?」


「わかんない」


あたしは首を横に振った。

生まれて初めて男の子から「好きだ」と言われた。

思い返すとなんだかくすぐったくて……正直なところうれしい。

だけど蓮君が無理だからといって、すぐに気持ちが切り替えられるほど簡単じゃない。


「とりあえずアド交換だけした」


「そっか」


あたしは芝生の上に仰向けでごろんと寝転がった。

昨日までの雨がウソみたい……。

空はどこまでも澄み渡っていて、自分の視界には青しか映りこまない。


――キレイなブルー……


ぼんやりとその青を眺めていると、吸い込まれるような錯覚に陥る。

そしてなぜか突然、その青が昨日見た美雨ちゃんの傘の色と重なった。

あの光景が脳裏に浮かぶ。

鮮やかなブルーの傘と、側で寄り添う黒い傘。

アクセサリーショップに入っていった蓮君と美雨ちゃんの姿。

あたしは頭に浮かんだ映像を掻き消してしまいたくて、ギュッと目を閉じた。




「良い天気だね……」


すぐ側で綾乃の声がして、あたしはパッと目を開けた。

見るとあたしのすぐ横で綾乃も寝転がって空を眺めていた。


「うん……」


芝生と土の匂いがする。

そよそよとそよぐ風があたしの髪を揺らせて頬をくすぐった。

その時、ふいに視界に白い物がフワフワと舞った。


それがすぐ側の教室にかかったカーテンだとわかった瞬間、風に乗って、教室の中から声が漏れてきた。




「……好きです」



……え?