深夜



　鈴音は静かな寝息をたてて、深い眠りの中に落ちていた。

「―――起きろ！おい！」

　誰かの声が鈴音を呼んでいる。

　遠くで？いや、近くで？

　眠っている鈴音には分からない。

（誰？）

　鈴音は眠気で重い瞼をゆっくりと開けた。

　視界に飛び込んできたのは、鈴音から向かって右側から覗き込んでいる白いヌイグルミ…

「昼間のっ!!」

　いきなり大声を出す鈴音に「しーっ！静かにしろ！」とヌイグルミは慌てて小声でいった。

　鈴音はハッとして手で口を塞ぐ。幸い、家族は誰も起きなかったようだ。

　落ち着いたところで手を口から離し、身体を起こした。

「夢？（なら早く覚めてほしい）」

「は？なんで？」

「え？だって…」

「あーっ！説明は後だ！」

　自分で聞いておきながら話を遮るかなり自己中なヌイグルミ。

　ヌイグルミが言い終わるか言い終わらないうちに、鈴音はベッドから身体が浮かびあがっていた。

「…ふぇ？」

　未だ混乱している鈴音にこれは追い討ちだ。

　鈴音は鈴音から向かって左側にある窓からヌイグルミと一緒に深夜の外に飛び出していた。

「き、きゃあぁぁぁあぁあぁぁぁあぁーーーっ!!!!!」

　鈴音の叫びは虚しく夜の暗闇に吸い込まれていく。

　今度は絶対に誰か起きたかもしれない。

　
　そして、辺りはまた夜の静寂に包まれた。