僕はぬいぐるみ。小さなぬいぐるみ。

赤いとんがり帽子に金色の髪。笑った目と大きな口にはチャームポイントの八重歯があって、緑の服に黄色のズボン。

右手には笛を持った小さなぬいぐるみ。


名前は……えっと。

『パノ』

そう、パノって呼ばれてた。


ずっと暗い箱に閉じこめられたままで、もうどのくらい経ったんだろう?


ずっと前、僕はゲームセンターのUFOキャッチャーの中で、他のぬいぐるみ達に埋もれてたんだ。

ある日、二人の男女が僕らの前にやって来た。

「あー! あれパノッティ?」

女の人が僕を指さしてそう言うと。

「あ、ホント。パノッティだ!!」

男の人はちょっと興奮気味に財布を取り出しながら相槌を打った。


僕はどうやらパノッティというキャラクターらしい。僕のどこが良かったんだろ?


カチャンカチャンと小銭を投入する音が聞こえると、僕の上から小さなクレーンが降りてきた。


(あ……挟まれた。持ち上げられる……あ、落ちた)

「あー、惜しい」

男の人は悔しそうにそう言うと、続けざまに小銭を投入してる。

「今度は取る!」


僕はそれからも何度も落ちてはコロコロ転がって、ちょっとイライラしちゃったけどね。

でもそのうちにクレーンにしっかり掴まれて、丸い穴の中へ放り込まれたんだ。

スルスルっと滑り落ちると、すぐに暖かい手で抱き上げられた。目の前には綺麗な女の人。

「可愛い~。パノ君だあ」



僕は『パノ』と、その時名付けられたんだ。