キッチンにはまだ誰もいなかった。 おじさんも、おばさんも、まだ夢の中にいるんだろう。 私はお世話になっている身ゆえに、それを配慮して物音をできるだけたてないようにする。 コーヒーの粉末が入ったびんから、スプーン一杯分の量をとりだしてカップに入れた。 ポットのお湯をそそぎ、角砂糖をひとつぽとんといれ、からんからんとかき混ぜる。 コーヒーは苦手で、普段はあまり飲まないけれど、眠気覚ましに一役かってくれるだろう、と思いごくりと飲む。 …砂糖入れても苦い。