月の心~それぞれの心

お月さまの生きた年月は
あまりにも長く
思い出の全てを
語り終えるには
何十年もの
歳月がかかりました

その間に女の子は成長し


素敵な女性に


優しいお母さんに


そしていつしか

朗らかなおばあさんに
なっていました


そしてお月さまが
全ての思い出を
語り終えた時

かつて女の子だった
おばあさんは

揺り椅子に
深く腰掛けながら
お月さまに向かって
優しく言いました

「それが、お月さまの歴史だったのね」

二人の間には
穏やかな時間が流れます

「楽しい思い出や、辛い思い出…お月さまも人間も、いいえ、地球に住む全ての生き物も、同じなのねぇ」

お月さまとおばあさん

二人は優しく
見つめ合います


「でもね、お月さま…私も年を取ったわ…私も、すぐに天に召される時が来ます」

その言葉にお月さまは
はっとしました

そうです

生き物は皆いつしか
天に召される日が
来るのです

かつてのウサギや
キリンのように
今目の前にいる
おばあさんも…

「でもね、お月さま…私は貴方に、伝えたい事があるのよ」

そう言って
おばあさんは立ち上がり

大きく手を伸ばします
少しでも
お月さまに近づこうと…