和人はまた優しく笑って、私の涙を指で拭って口を開いた。
「変えてないよ。番号もアドレスも……」
変えて……なかった。
「サクラに今日会えて、よかった……」
「私も……」
そのまま和人のもとから、泣きながら立ち去った。
抱きつきたかった。
好きって伝えたかった。
だけど、我慢できたのは少しだけ希望が見えたから。
電話するから、ゆっくり話しよう?
私、今度は逃げないで、きちんと和人の話を聞くから……。
「ミー! こっち!」
階段を下っていくと、リョウくんも登ってきてくれていて、私の手を掴んでグイグイと引っ張っていく。
「リョウくん、なんでそんなに焦ってるの!?」
「時間がねーから!」
「時間って……何のこと?」
わけが分からないまま、人混みを掻き分けてバイトのメンバーで固まったレジャーシートに座っている区画まで連れてこられた。


