「ここでいい。あのマンション!」
「じゃあな。帰りはきちんと彼氏に送ってもらえよ」
「うん。ありがとう!」
リョウくんに何度もお礼を言って、小走りでマンションへと向かう。
帰って来てるよね?
帰って来てなかったら、自動販売機の横のベンチに座って待ってよう……。
夜遅いけど、今日くらいは和人もきっと許してくれるよね……?
マンションの入り口を開けて、一歩、足を踏み入れた瞬間……。
私の足は止まる。
自動ドアの前で
俯いて泣いてる女の人がいて。
寄り添うように、肩に手を置いた男の人と目が合う。
「……サクラ」
和人と……木下さんだった。


