その後、
なんとかたこ焼きを手に入れたあたし達は、中庭の隅にあるベンチに腰掛けていた。
「桃ちゃんも、食う?」
上機嫌の深町京悟がたこ焼きの乗った紙皿を差し出す。
「いらない」
あたしは首を横に振った。
たこ焼きなんて食べる気になれなかった。
今はもう手は繋いでいない。
なのに、あたしの意識はまだそこにある。
指や手のひらに、深町京悟の体温がまだ残っているような、そんな感覚。
あの時、すごく怖かったはずなのに。
手をつないだ瞬間、深町京悟の熱があたしに伝わってきて、すごく安心した。
”大丈夫”
って、言われてるような感じだった。


