ドクン ドクン 彼が近づくにつれ、緊張感が高まる。 ダメ……心臓壊れる。 もう声をかけられるぐらいの位置にいる。 なのにあたしの口はカラカラに渇いて、言葉が出てこない。 あと3歩 2歩…… 1歩…… 「ふかまち……」 すれ違った瞬間、なんとか声を振り絞った。 それはとても小さな声だったけど、聞こえてないはずはない。 なのに深町京悟は足を止めてはくれなかったし 一度もあたしの方を見みようともしなかった。 ――また無視されたんだ。