「瞬ちゃん……あたし、伝えてくるね」



カップをテーブルに置いて立ち上がる。



「桃」



瞬ちゃんが窓を開ける。


ビュンと風が吹き込んできて、あたしの髪を揺らす。




風に乗って、校庭から生徒達のはしゃぐ声が聞こえてくる。



今日もまた誰かがあの迷路をさまよっているのかな。


一生懸命、出口を探しながら……。



瞬ちゃんはコーヒーを一口飲んでから、外に目をやった。




「祭りはまだ終わってないよ。
思いっきり楽しんでこい」




瞬ちゃんが背中を押してくれた。




「うん」とうなずいて。


あたしは笑顔で言った。



「行ってくるね」




国語準備室を飛び出して、廊下を走る。



彼のもとへ。



この思い……伝えなきゃ。