しばらくしてあたしもトイレから出た。 だけど、なんだか教室には戻りたくない気分だった。 まだあのアユミって子、いるのかな。 深町京悟と楽しそうに話すあの子の顔がチラついてまた落ち込む。 はぁ……とため息をついてからきびすと返すと 教室とは反対方向へ足を向けた。 「桃、桃!」 ちょうど国語準備室の前を通りかかった時、 瞬ちゃんがドアから体を半分ほど出して、おいでおいでと手招きしていた。 あたしは慌てて駆け寄る。 「ちょ、瞬……北瀬川先生! 学校でその呼び方はまずいってば!」