屋上のドアを閉め、石切先生は鍵をかけた。 さらにもうひとつ。 ドアの上部、男の人が手を伸ばしてやっと届くような位置にある鍵もかけようとする。 それを見て「……あ」と、声をあげる深町京悟。 「なんだ?」 「いえ、なんでも」 「まったく……誰が閉め忘れたんだ?」 ブツブツ言いながら、石切先生はふたつ目の鍵もかけてしまった。 その時あたしは、この扉に鍵がふたつあることをはじめて知った。