「………チーフ任されて、普段の業務以外にも経営のコトも考えなきゃいけなくて………いつかは自分の店を持ちたいって夢もある。焦るの。何か…ワカンナイコトばっかあって、気持ちだけ焦っちゃうの」
「……………」
「………美容師として、技術も上げたいし、お客様にも今以上に満足してもらいたい………そのために…どうしたらいいのか………」
「……………」
「……まだシンが東京行ってひと月」
「………今もだけど、結婚してからも………シンに…迷惑、かけたくないし…」
「エリ………」
俺は見逃さなかった。
泳ぐ視界に飛び込んで来た、エリの涙の、雫。
「………シン…?」
気づいたら、俺は。
包み込むように、そっと。
エリを抱きしめていた。
自分の愚かしい胸の内をも、隠すように………。



