ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】





「―――――ってぇ…………なぁぁあ!おいっ!!!何すンだよ!!!!!」


夜明け前、幾つもの星が、鈍い音と痛みとともに俺の目の前に降ってきやがった。


イテェ………思わず額を両手で被う。


「真一、キスしようとするから頭突きしてやった」


「………」


俺は、返す言葉を失った。
それは、図星だからではなく―――――


「そんな浮ついた気持ちでいたら、婚約者に失礼だよ」


「………あ…ああ。ゴメン…悪かった………」


「あたし、真一とはずっと、友達であり、戦友でいたいの………いさせて………」




真っ直ぐ俺を見詰める結可子の目には、一筋の涙が頬を伝っていた。




「あ、タクシーだ」


「えっ?」


タクシーを見付けた結可子は、直ぐさま手を挙げて、タクシーを停める。




「―――――真一………来てくれてありがとうね。東京戻ったら改めてお礼させて」

「おいっ………どうすんだよ?」


「………今日はおばあちゃんとこ寄らないで真っ直ぐ東京帰る」


「なら俺も仙台駅まで送るよ」

「大丈夫だから………ありがとう、真一………また月曜日、学校でね。日曜日、門限までに東大和に帰るのよ。寮母さんに迷惑かけないように」


さっきの涙の跡もそのままに、結可子は笑顔で俺に告げた後、タクシーに乗り込んだ。


ドアが閉まり、タクシーが走り出したと同時ぐらいに、結可子は俺に軽く手を振った。




「何だよ………あいつ………母親みてぇな事言って………」


俺はただ。
夜明け前、車通りの少ない道を。
彼女を乗せた、仙台駅方面へ走るタクシーをぼんやり見ているだけしか出来なかった。