「ゴメンね………あたしは警察の人に『誰も呼ばないで』って言ったの………言ったんだけど………どうしても身元引受人が必要だから…って」
結可子の、鍋を混ぜる手が止まり、俯いてしまった。
「お前、ばあさんはどうした?ばあさんとこに行く途中だったんだろ?」
チラッと俺を一目したが、また伏せてしまった。
「………警察から電話が来て、しかもあたしが男に襲われたなんて知ったら、いくらピンピンしてる80過ぎたばあちゃんでもひっくり返っちゃうと思って………言えなかった………」
事件も事件だっただけに、どうしても身元引受人が必要と警察。
しかしばあさんに迷惑かけられないと、連絡を拒む結可子。
彼女には、仙台にばあさん以外身内や友達がいなかったため、悩んだ揚句、俺に電話してきた………と言うのだ。
その後、結可子にとってばあさんは、自分の親以上に大切な人と言うこと、どんな時も、彼女の味方になってくれたことも。
そう。
彼女が離婚を決意した時も………。
「―――――別れた彼ね、申し分ないいい男だったの………俗に言う“政略結婚”だったけど、あたしにとっては、勿体ないほどのいい男(ひと)だった。でも………」
「でも?」
「………でも、ダメになっちゃった………」
愛想笑いしながら結可子は、初めて離婚について語り出した。



