「あ―――――」
「何だよ?」
何かを思い出したように一言発し、俺を指差して、
「さっき、あたしのこと“結可子”って呼んだ」
少し驚いた表情をした。
「………あ」
「久し振り。真一に名前で呼ばれたの………」
「………」
「………大学校では、みんなあたしのこと“加東”って呼ぶから、名前だと何か新鮮だね」
結可子は両手で口元を覆い、クスクス笑い出す。
何だよ?
黙りこくったかと思ったら。
今度は笑いやがって。
「おめーさ、襲われて頭おかしくなったろ?………人の事こんな夜中に呼んどい―――――て…?」
あれ?
おい?
俺を指差して笑ってたかと思ったら―――――
「結可子………お前、泣いてんの?」
後ろから来た車のヘッドライトが、結可子の涙を気付かせた。
「ごめ………真一を呼ぶつもりなかったの………」
結可子が落とした涙が、真夜中の凍てつくアスファルトに跡を残す。
きゅるるるるるる~
何ともタイミングがいいのか悪いのか。
シリアスなムードをぶち壊す、腹の虫の音―――――
はあああ…………。



