本当は、こんな不安な気持ちでいるエリを置いてなんて行きたくない。
久し振りにエリと一緒にいられる時間が出来たのに………。
でも、行かなきゃならないんだよ。
アイツが、俺を呼んでいるから………。
さっきの警察からの電話―――――
『実は加東さん、ご自身のおばあさんの家へ向かう途中、背後から男性に襲われてそのまま………』
何で………?
『大事に至らなかったのが、不幸中の幸いでした』
何だよ?ウソだろ?
『たまたま通りかかった人から110番通報がありまして、襲った男性を準強制わいせつ罪で現行犯逮捕―――――』
聞きたくない部分だけが耳に貼り付き、脳内に響き渡る。
職業柄だろうか。
事務的に話す警察の口調が、何とも非情に思えてならない。
女が一人、襲われたんだぞ?
それも、俺の昔の女が………。
エリ、ゴメン。
お前を不安にさせる俺を、許して欲しい―――――
最後にもう一度。
エリに、触れるだけのキスをした。
まるで、罪滅ぼしのような口づけを………。
必ず、お前の元に戻るから。
アイツを、結可子を、放っておけないんだよ………。
ほんの少しの間だけだから―――――
俺は、タクシーを見送ることなく、足早に警察署へと向かった。



