目的地のスタンドまで、あと30メートル…というところで、ハザードのカチカチという音。
ドライバーは、スタンドの邪魔にならないよう、少し先で車を停めた。
「エリ。明日必ず連絡するから、悪いけど今夜はこのまま多賀城へ帰って」
「えっ?」
タクシーの扉がゆっくり開く。
荷物を抱えながら俺は車から降りた。
「…ちょ…待って、シン?!……一体どうしたの?」
「…………と、友達が……事故起こしたらしくて………何か、俺にどうしても来て欲しいって………」
―――――言えねぇよ。
「大変じゃない!!アタシも行くよ………?」
―――――本当の事なんか、言えねぇよ。
「あ………大丈夫。何時に帰れるかわかんねぇのに、お前まで巻き込ませたくないから………ゴメン」
「ん………わかった………」
ゆっくりと項垂れるエリ。
そして思い出したかのように素早く顔を上げ、
「………シン、アタシ、一日中待ってるから!!メールでも…いいから………」
絞るような声で、そう俺に訴えた。
その間俺は、財布から一万円札と千円札を一枚ずつ抜き出し、エリの左手に一万円を握らせる。
「これ………」
「タクシー代、それぐれぇかかるだろ?返すことないから」
残った千円札を、中年ドライバー渡し、
「悪りぃけど、多賀城市立図書館まで行って」
と告げた。
チップを貰ったドライバーの表情は露骨に緩み、“どうも”と返す言葉も嬉しげだ。



