「ゆ………」
と、言いかけ、“んっゴホッ…”咳払いを一つして誤魔化す。
危ねぇ………。
まだエリには結可子の事言ってないから、こんなとこで、エリの知らない女の名前なんか言っちゃったら、思いっきり誤解されるって。
俺、婚約してる身だっつーのに………。
俺は、警察の話を“はい”と“わかりました”だけで会話を完結させ、静かに電話を切った。
「シン…………」
「すいません!!今、どの辺り走ってますか?」
エリの声を打ち消すように、運転席の方へ身を乗り出し、強い口調でドライバーに訊ねる。
「んああ?………あー、今、苦竹(にがたけ)駅過ぎたよ」
いきなり女とキスしたと思ったら、車中でケータイ使って喋ってた俺だったからか。
ドライバーは怪訝そうに俺をチラリと一目し、イヤそうな声で返してきた。
「わりぃ、その先…ほら、“コスモ”の看板見えるだろ?そこンとこで止めて!!」
「はいよ」
「ねぇどうしたの、シン?………怖い顔して………」
心配そうな面持ちで、俺の強張る顔を覗き込んでくる。
さっきまで、お前の事だけしか考えられなかったのに。
警察からの電話で、頭ン中は一気に結可子の事だけになってしまった。
あんなに、エリを欲しがっていたのに………。



