唇に染められたグロスは、蜂蜜にも似た艶やかさ。
舌先で軽く触れると、そこは甘い………果実の味。
ルームミラー越しに、ドライバーと目が合うが、無視。
タクシーの中だと解っていながらも、エリの潤った唇を貪っている自分がいた。
唇が離れた瞬間“ちょっ…待って…”と、声を漏らすエリ。
「やだよ」
エリの耳元に、小さく意地悪な言葉だけを残し、再び甘い蜜を味わおうと、唇に詰め寄る。
ブブッブブブッブブブッブブブッ…………
突然の振動に、二人の動きが止まった。
「シン………電話………」
エリはこの隙に、一旦俺から身を離す。
ハーフコートのポケットからは、規則的なケータイの振動。
「どうせメールだよ」
無視していたが、なかなか振動が鳴りやまない。
「………電話………出てみたら?」
不安そうな表情で、見詰めるエリ。
その表情に後押しされ、ポケットからケータイを取り出す。



