「彼氏にドタキャンされて、“アタシひとりなんだ…”とかほざいてたけどウソかよっ!………オバサン、ちゃーんと管理しといた方がいいよ~?俺みてぇに悪いヤツにあっさり捕まっちまうよ」
「………」
おかーさんは、現状を把握しきれずにいた。
いつも毅然とした態度をしているシンのおかーさんが、ノブの態度に少しおろついていた。
アタシも現状把握できてない。
何で?って。
頭ン中が疑問符だらけ。
そのトキ。
ノブが、グイッと強引にアタシのカラダを自分の方に引き寄せ、耳元で微かながら何か呟いた。
「―――――!」
「―――――ほらよっ!」
ノブはアタシのカラダを突き飛ばし、シンのおかーさんに軽くぶつかった。
「アンタ、彼氏にドタキャンされたくらいでフラフラするなよ」
吐き捨てるように言い放った後、下から舐めるようにアタシたちを見、ノブは灯ろう流しからの帰りを急ぐ人混みに紛れ、消えるように去って行ってしまった。
ノブが去った方向を、アタシとおかーさんは暫く見ていた。
「………衣理さん………何なの?今の人………?………ナンパ?」
おかーさんが、重い口をやっと開いた感じで話す。
「あ………し、シンが今夜仕事で急に来られなくなって………アタシ一人でフラついてたら声かけられて………」
「あら………そうなの………ならいいんだけど………へんな虫が寄り付かないように、あなたも気をつけなきゃダメよ」
「………はい…スミマセン………気をつけます………」
シンのおばーさまは、先におとーさんの車で帰ったらしく、おかーさんは茶道仲間の方との話が長引き、地下鉄で帰ろうと一人歩いていたところでアタシとノブを見掛けたとのコト。
おかーさんは“帰り、送っていくわよ?”と言われたケド、“寄るとこあるから…”と、申し訳ないがお断りして、市営地下鉄河原町駅の改札口前で別れた。



