「―――――もしかして、俺が送り狼になるとでも?」
「ハァァ~?」
思わずデカイ声になってしまった………。
「心配すんなよ、昔の女に手ェ出すほど、俺は飢えてません」
「んもーっ!何なのぉ~?マジメに考えてれば………」
ノブは涼しい笑顔してアタシを見てる。
なのにアタシったら膨れっ面で、ノブの二の腕をバシバシ叩いてるし。
“痛てぇ~”って、ノブは眉間にシワ寄せて叩かれた腕をわざとらしく摩り、痛そうな猿芝居をうってみせた。
自然とお互いの表情に、笑みがこぼれる。
ノブが、そっと左手をアタシの前に差し出す。
「………ほら、足元悪りぃんだから。捕まってねぇと、今度は踏み潰されっぞ。おっちょこちょいなんだから、衣理」
帰る人波が、花火が終わった直後よりも強く押し寄せてくる。
確かに、周りが薄暗いからこれでは簡単に逸(はぐ)れそう。
「………“おっちょこちょい”は余計なんだけど………」
「ゴメンゴメン。ま、それはいいから………危ねぇから行くぞ」
アタシの戸惑いなんかお構いなしに、ノブはアタシの右手を握って歩き出す。
力強いノブの手。
付き合っているトキは、もっと冷たくて、温もりを感じられずにいたノブの手。
今はこんなにあったかい――――
それが逆に、怖い―――――
「―――――あら?衣理さ…ん?」
宮沢橋を渡っているそのトキ。
背後から女性がアタシの名を呼ふ。
聞き覚えのあるその声に反応したアタシの全身に、軽い電流が走った。



