「………ヘンな意味じゃなくて、何か衣理の力になってやれないかな…って思ってさ」
「ノブ………」
「春に衣理に逢った時、思い詰めてるような、悩みでもあるような………浮かない顔してたからさ、気になって………」
ノブに再会する直前まで、栞とチャコに“シンときちんと向き合う”コトについて、改めて考えさせられたからな………。
ノブに逢ったトキも、アタシはかなりの警戒モードだったしね。
「ま、でもよかったよ。で、いつ結婚すんの?」
屈託のない笑顔で訊くノブ。
アタシの複雑なキモチも知らないで………。
「それが………わかんない」
「わかんない?何でだっちゃ?………んだってプロポーズされたんだろ?」
声を荒げに、即答してきた。
「ん………去年のクリスマスイヴに、プロポーズされたことはされたんだけど………彼、今、中小企業診断士の国家資格取るために勉強してて………その資格取るまで、結婚を待ってってコトになってるの………」
「そっか………」
「―――――で、ひとまず試験も終わり、彼のおじーさまの新盆も済んだのもあって、今夜久し振りにデートだったんだけど………急な仕事が入って、帰りが遅くなりそうだから逢えないって………」
アタシは笑って誤魔化した。
精一杯、笑顔でいたつもりだったんだけどな………。
「無理すんなよ。顔がホントの笑顔じゃねぇよ」
―――――ノブにはすぐにバレてたようで。
「急な仕事なら仕方ないだろ?こんなんで落ち込んでたら、水嶋さんと結婚するまで身ィ持たないぞ」
そう言ってノブが、アタシの両頬を軽く抓(つね)り、頬を上げる。
「ほら、笑った笑った。折角掴んだ幸せが逃げちまうぞ」
また、屈託のない笑顔をアタシに見せる。
ドキドキが秒針のように細かくアタシの胸の奥を刻んでいく。
時に跳ねたり、締め付けたり。
ノブの、そのメガネの奥の瞳に、アタシはどう映っているんだろう………?
そして、アタシは彼に何か特別な期待をしてる………?
そんなにアタシを見詰めないで………。
キモチ、読まれそうで、怖い。



