「―――――ここまで送って頂き、ありがとうございました」
「………村越………すまなかったな。みっともない格好を見せてしまった………」
「いえ………仕方ないです。最愛の奥さんを亡くされたんですから………心中お察しいたします………」
「すまないな………」
東京駅―――――
東北新幹線ホームまで、ハルヒに送ってもらってしまった。
あれから、ここに着くまで特に彼との会話はなかった。
乗せてもらっただけで俺はもう十分なのに、律儀なハルヒはホームまで送ってくれた。
実に、彼らしい。
ありかとう、ハルヒ。
発車5分前。
ホームには雨音と雑踏、アナウンスがこだまする。
「来月からお前もいよいよ教師1年生。教育、生徒、組織、親、地域…いろんな問題があって、教師もなかなか大変な職業だけど、お前ならやれると俺は思う。精一杯やってこい!!教師が自分に向かないと思ったら、違う道だってある………。俺も、茉莉子の事で落ち着くまでまだ時間がかかりそうだけど、なんとかやっていくから………俺は、大丈夫だから………」
俺の両肩をボンッと強く叩き、励ましを浴びた。
その表情は、少しぎこちなかったが、彼はあの笑顔が精一杯だったんだと思う。
「落ち着いたら、大学に遊びに来い。いつでも待ってるから」
“それと………”と、ハルヒがジャケットの内ポケットから、白い封筒を取り出し、それをそっと俺に渡す。
「ハルヒ………これ………」
「………茉莉子の遺品、整理してたら出てきた」
封筒には“村越敦裕 様”。
後ろには、“吉岡茉莉子”と、青い万年筆で書かれた、彼女の見慣れた文字。
きちっと、封緘(ふうかん)されてあった。



