それまで、愛しい妻の思い出話を微笑んで語っていたハルヒの表情が急変。
「―――――あいつ、妊娠、したんだ」
「えっ―――――?」
「………大学4年になったばかりの春、俺の子供を身籠もった………。まだ彼女は在学中の身。卒論や教員採用試験への不安があっただろうに、“大学さえ卒業すれば、教員資格は取れるから、採用試験はいつでもチャレンジできるし、心配しないで”と、何より妊娠をとても喜んでいた。………だが、籍を入れて間もなく。妊娠5ヶ月の時に………子供が流れた………」
「―――――」
―――――言葉を失った。
「…………茉莉子は俺と出逢ったばっかりに、教師になる夢も、子供を産み、育てる夢も失った」
「大学は無事卒業したものの、茉莉子が受けた精神的ダメージは大きく、憔悴しきっていた………健気で前向きだった彼女が立ち直るまで、3年かかったよ………」
ハルヒの顔が痛々しくて、見ていられなくなった俺は、外に視界を向けた。
きっとハルヒは、献身的に尽くしたんだろうと思う。
それは、後ろめたさではなく、愛しているからこそ出来たことなんだと。
俺には、解る。
斜めの点線になってくウィンドウを、ただ、ぼんやりと眺めるだけが精一杯。
「お前の事“変えてみせる”って言ってきてからだ。茉莉子が以前のように戻ってきたのは………」
………俺?



