“茉莉子”は、俺の妻―――――
どーゆーこと?
茉莉子、お前………
ひと…づま?
「―――――正確には、妻“だった”だけどな。」
「えっ?!」
思わず俺は声を漏らしてしまった。
「―――――あ、雨………。天気予報では雨なんて言ってなかったのに………」
フロントガラスには、ポツポツと、小さな水玉。
ハルヒが呟き、一度間欠ワイパーをかけるが、すぐ止めた。
ワックスが効いているせいだろう。
高速のスピードで、更に小さくなった水玉がキレイに放射線状に外へ流れていく。
流石はBM。ワイパー不要だ。
空が薄暗くなってきたとは思っていたが、時間のせいではなく、雨雲のせいだということに今更ながら気付く。
「俺は茉莉子を連れて、学会と研修兼ねてアメリカへ1年半行く事にしていたんだが、彼女がどうしても『日本に残る』って効かなくて。昔から頑固と言うか…」
「……………」
「―――――俺と茉莉子の出逢いは、彼女がまだ高校生だった頃に遡(さかのぼ)る………」
考えの回路が上手く繋がらないままの俺を置き去りにしたかのように、ハルヒは話を続ける。
走る車たちのテールランプ。
車内では、囁く位のFMラジオが流れている。
雨で滲んだ東名高速は、水彩画で描かれたモザイクのような景色に見える。



