ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】





車は、4年間住んだ町田を離れ、大和バイパスから東名高速の横浜町田インターへ。


この4年間、本当に色んな事がありすぎた。
入学したばかりの頃は、卒業できずに1年のうちに退学するんじゃないかって、自分でも思っていた程。

女に明け暮れて過ごしていた日々。

それが、気づけば教員免許も取り、留年なく無事卒業。
来月から教師として新しい一歩を踏み出す。


それにしてもこのBMWの乗り心地は最高で、乗ってまだそんなに時間が経っていないのにも拘わらず、眠気が俺を襲う。
クルマがこんなに“快適”でいいのか?
運転してて眠くなりそうでは、マズイんじゃね?


お互いに特別な会話もない。
そんな俺がウトウトとしていると、ETCレーンが列を為す。
軽い渋滞が始まった。


「あ、そーだ。俺、さっきコンビニで飲み物買ってきたんだよ。村越、後ろの座席に袋あるから取って」


プロフェッサー春日………では長いから、普段呼んでた“ハルヒ”にしてこう。

“春日”をそのまま読んで“ハルヒ”。
何とまぁ単純なあだ名。

ハルヒの言う通り、後ろからコンビニの袋を彼に渡す。


「これ、なかなか店に売ってなくてなー。嬉しくて買っちゃったよ。村越の分もあるから、飲んで」


そう言って袋から取り出したのは、500mlのペットボトル。


「………ジャスミンティ………?」


「あれ?もしかして、お前もダメ?結構匂いがキツイとか、味がイマイチとかで俺の周りでも評判あんまし良くなくて………。中華系には欠かせない飲み物だったりすんだけど、日本人向きじゃあないのかもな………。俺は好きだけど」


語るだけ語り、渋滞で停まっている間、彼はジャスミンティを一口飲んだ。
車内中に、ジャスミンの香りが仄(ほの)かに漂う。


「いや………大丈夫ッス」


ホントは俺、香りの強いの苦手なんだけど………。

そう言えば、茉莉子は平気だったな。
海鞘(ほや)も匂いに関して問題なく“美味しい”って喜んで食べてたな。


ま、貰った手前、文句は言えまい。
キャップを開け、軽く口を付けた。