「もし、ノブの一言が原因で二人が別れたならば、それまでのお付き合いだったんでしょ。………多分、あたしの予想からだと、ノブの一言を巡って双方の話し合いはあったはず」
茉莉子からちょっと身を引き、お茶をゆっくりとテーブルに置いてみる。
「本当にお互い信じ合っている恋人同士ならば、その誤解だけで別れたりしないと思う。危機が却(かえ)って絆を強くさせてるかもしれないし」
鉄の女の言うことは、違った。
普通ならば、“そんな事言ってバカだ”とか言われて完全否定されるのがオチなのに。
彼女は、違った。
「―――――もし、チャンスがあるならば…いや、チャンスを作ってでもその元カノと彼氏には、ちゃんと謝るべきね。特に元カノ。短いながらもノブと付き合ってた頃の淡い思い出が、最悪のままってのは残酷よ。誠意を持って謝罪すれば、彼女だって解ってくれると思う………」
それもそうだ………。
自分だって、思い出は出来れば美しいままにしておきたい。
(…とは言っても俺の場合は、女のカラダだけが目当てばっかだったから、“美”って漢字が当て嵌まるレベルじゃないが…)
「………謝るにしても、ケータイとかわかんねぇし………」
茉莉子に消されたからな…全アドレス。
そうは言えない自分がいたり。
茉莉子は廻って来た海鞘の皿を受け取りながら、唇を開く。
「大丈夫よ。必要な時に、神様がちゃんと二人を引き合わせくれるから」



