「………“それだけ”って………他にあんのかよ」
そう返すと、少し呆れ顔になった。
「………ノブは頭カタイわね。………あるわよ。いい?」
そう言って、茉莉子は俺のルーズリーフにサラサラ…と何やら書き始めた。
初めて見る茉莉子の字は、教科書体のように整っていて美しかった。
俺の字は………クセがありすぎて読みづらい。
我ながら下手だ………愕然とする。
「さ、書いたわよ。いい?説明するわね」
俺は、『1+1=2』と書かれた文字に目を落とした。
「確かに、単純に数学なんかでは四則演算の一つである加法(足すこと)でやれば答えは2。でも、あたしが求めているのは、『答えはそれだけではない』考え方の部分」
「考え……方」
頭がホワン…としてくる。
靄(もや)がかかっている………そんな感じ。
「例えばこれが、コンピュータなどが読み取る1と0の組み合わせでしかない二進数だったら、答えは10(いちぜろ)だし、単位を入れてみて、1cm+1mだったら101cm。1人+1人だったら2人だけど、もしかしたらそれが愛する男と女だったら子供が生まれて…3って答えにもなる」
茉莉子がルーズリーフに“3人”って書いて、シャッと、その周りを丸で囲んだ。
そして、俺の方をまた、上目遣いでチラッと見る。



