「………俺、ずっと衣理に謝りたかったんだ………。でも、謝らなきゃいけないことに気づいたのは、結構後になってからって言うのか、最近って言うのか………」
「………」
ノブは、カフェ・アメリカーノを、まるで気持ちを引き締めるかのように、ゆっくりと一口啜り、容器をテーブルに戻した。
「………なぁ、こんな事言うの、すんごく勝手かもしれないけど………俺の話…聞いてくれるか?」
どうして今日、彼と偶然会ったんだろう……………。
―――――――確かにノブには会いたくなかった。
勇気振り絞って告白した高2の冬。
やっと恋人同士になったと喜んでいた矢先。
あっさり3ヶ月で他の女に鞍替えされた。
それから同じ学校でもほとんど会うこともないまま、お互い高校を卒業。
卒業した年のクリスマスイブ。
シンとの待ち合わせ場所で、ノブに偶然会って。
彼の卑猥な態度と、コトバ。
あの時の彼は、今までに見たことのない、醜く見えた。
本当に会いたくなかった。
なのに、どうして今、アタシの目の前にいるの………?
シンとのことで、これから向き合おうと決心したトキに。
いつものアタシならば、突っぱねて腕振り解いてさっさと帰るところなのに。
そんな気持ちをまるで見透かしているかのようなノブの瞳(め)は、瞬きもせず、アタシをじっ………と見ている。
さっきから、彼は見たことのない真剣な表情を見せる。
眼鏡の、その視線の奥には、ホントのノブがいる?
ノブの言葉を信じていいの?
この表情を信じていいの?
不思議にこの状況を背くほど、彼を恨んだり憎んだりしていないアタシがい
る。
聞こう。
今日会ったのも、何か意味があるのかもしれない。
聞こう。
今日会ったのも、この話を聞くためなのかも………。
そう思い、アタシは。
「………うん。聞く……………ノブの話、聞くよ………」
こうして、アタシは、ノブの話を聞くことになった。



