ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】

「衣理さん」

「はい」

おとーさんがアタシに、シンを怒った口調や声色をそのまま引き継ぎながら訊ねる。

「衣理さんは、若くて、美容師という素晴らしい腕をお持ちで。ましてや、まだご弟妹(きょうだい)も中学生。ご両親と共に、大友家を支えてらっしゃるとのいうではないですか」

「ええ………まぁ………たいしたことはしてませんケド………」

「………こんなほでなす息子でも、我が家にしてみれば、子供は4人いても、一人息子。水嶋家の跡取りなんです。確かに真一の言うとおり、私が大学生、家内は中学生の時に知り合い、10年ほど付き合った末に結婚しました。しかしこの水嶋家は、家内しか子供がいなかったため、私は婿養子に入ったんだよ」

おとーさんが、お茶を一杯啜り、話を続けた。

「この水嶋家は、代々女の子だけしか産まれなくてね。多喜子さんもみんな女姉妹。我が家では茶道を代々やっていることもあり、それを途絶えたくなくて、今入院しているお祖父さんを婿に迎え入れた。真一が生まれたとき、私は“やっと水嶋の家に男の子が生まれた”って、とても嬉しかった………。私は、真一にはかなり厳しくもしたが、きちんとした姿を見せていれば、彼はいずれこの家を継いでくれる。守ってくれると思っていた………」


おとーさんの視線が、シンの方に変わる。

おかーさんと、おばーさまは、不安げな表情で、おとーさんを見つめていた。