「約束はやぶらない」
シュリの声が聞こえた気がして。
あたしはゆっくりと顔をあげた。
「グギュェェェェ!!」
醜い絶叫と、風を切る音がした。
「……うそ……」
大きな背中。
獅子のように猛々しい長い黒髪を風になびかせ。
あたしの前に立ちはだかるその背中。
あたしの待ち望んだその人が、今、目の前にいた。
「シュリ?」
あたしは信じられなくて、彼の名前を呼んだ。
彼は手にしていた剣を鞘におさめると、ゆっくりと振り返った。
「大丈夫か?」
「シュリ!!」
あたしは彼の腕に飛び込んでいた。
怖くて、怖くて。
今頃になって、足の震えが止まらなかった。
彼はあたしをギュッと抱きしめる。
その鼓動の音に、その体温に。
あたしはやっと緊張から解放された。
ここがあたしの場所。
そんな気がする。



