部屋の床はペルシャじゅうたんのようなもので覆われていた。
歩くたびにふかふかと足の裏を押し返す。
あたしの部屋のじゅうたんも素晴らしいけど、ここのも負けず劣らずってかんじ。
置かれているテーブルも椅子も、細やかなレリーフで飾られている。
必要最低限のものしか置かれていない簡素な部屋。
面積ほど狭いものの、さすがに国の名誉職にあてがわれてるって感じられた。
「あの……お話があるんですけど……」
テーブルに肘をついた姿勢で座っているカレンに促されながら、あたしは向かいの椅子に座った。
なんか、妙な緊張感。
「なんでしょう? なにか思い出されましたか?」
ダークグレーの瞳が射抜くみたいに鋭くあたしを見据える。
「あのぉ……それがぜんぜんダメで。気分転換に……お城の外に行きたいなぁって思いましてぇ……」
あたしの申し出にピリリっとした空気になる。
後ろで起立している二人の騎士(フランとユーリくん)の背筋がさらにのびた気がする。
「今の城下の状況をお話ししたのですか?」
「それは……ですねぇ……」
「聞きました! 二人にもダメだって説得されたんです!! 魔族がいるから危ないって! でも、あたしちゃんと見たいんです!! もしかしたら、記憶を取り戻すきっかけになるかもしれないし!!」
実はこれ、『ウソも方便ですから』っていう、これはフランの入れ知恵。
カレンの説得はちょっとやそっとの理由じゃ無理って。
そう言われて考えたセリフをあたしは言ってみる。



