「オレの顔に何かついているのか?」

フランスパンらしきものを丁寧にちぎっていた手が止まって、ジロリとにらまれる。
迫力のある黒曜石の瞳にあたしは慌てた。

「な……なんでもないです。なんでも……」

「食事中にあまり人の顔を眺めるな」

「は……はい……」

すみませんと素直に謝って、あたしはちらりとフランを見た。

彼は口元に人差し指を当て『気をつけて』と口パクした。


『この絵のことは秘密にしてくださいね』


とフランに念押しされていた。

どうやら、あの絵だけでなく『獅子王ラエル』と『シュリ』に関すること全て。

この国ではとーってもナーバスな問題らしい。

聞きたいのに聞けないって。

それってすっごく聞きたくなるんだよね。