「帰りたくなったか?」
シュリの真顔がそこにあった。
確かに。
ちょっと帰りたいかもしれない。
「……ううん」
あたしはウソをつく。
帰りたい気持ちがいっぱい溢れてくる。
でも、そうなったらあたしはシュリとお別れしないといけなくなるんでしょ?
「ちなみにこれ、カレンの手作りなんですよ、姫様」
なんとなく暗い雰囲気を察してか。
クラウスがそう話しかけてきた。
「そうなの?」
「カレンさんは料理の腕前も主婦級なんですよ、姫様」
主婦級って。
こういうときはプロ級とか言うんじゃないの、ユーリくん?
あたしは思わず笑ってしまった。
みんながそれに続くようにして、笑う。
この時間が止まればいいのに。
そうしたら。
あたしはずっとここで。
こうやって。
笑っていられるのに……
「カレン、伝令だ」
笑い声が止む頃。
クラウスはそう静かにカレンに告げた。
クラウスの指示す下流の方から、もの凄い勢いで黒馬が走ってくるのが見えた。



