「シュリ!」

嬉しすぎて、あたしはシュリの首に巻きつくように抱きついた。

間違いない!
あたしが知ってる、あたしだけの『シュリ』だ。

でも、いろんな意味でおかしい。


火傷しそうなくらい熱く感じたシュリの体。
今はびっくりするくらい穏やかな温もり。

明らかに『平熱』ってかんじ。


それにさ。
シュリって『魔人化』が『唯一』の『変身パターン』じゃなかったっけ?

ネコミミっぽい。
ネコシッポっぽい。
たてがみっぽい。

たぶん『ぽい』じゃない。


これってもしかしてじゃなくても『獣人化』!?


でも、なんで?


あたしはさ。
確かに『魔人化』のシュリをどうにかして元に戻したいって思ったよ。
でも、『獣人化』なんて思ってもない。


巻きついた手を少しほどいてシュリの頬を見る。
ひび割れていた肌がつるんとしたタマゴ肌に変ってる。
傷も砂もない。


これって。


「病気……消えちゃったの!」

ペチペチと顔を叩く手をシュリの長い指先が捉える。


「ああ、おまえのおかげだ。おまえの癒しの力で、オレは救われた。だが、喜ぶのは後だ」

あたしの体をやんわりと地面に下ろすと、シュリは表情を固くして左右を見つめた。

大地を埋め尽くすように這い回っていたトカゲやら、カラスやらの姿はなくなったものの。
……魔王とその息子の姿はしっかりそこにあった。


「そううまくはいかないよね……」

「だが、効き目はあった」