瞬間、溢れたのは光。


パリンッ。


……小さな音を立てて、胸元で揺れていた赤い雫の宝石が砕け散った。


途方もないほど眩い黄金の光の波紋が激しい振動をともなって広がって、あたしの体を吹き飛ばす。


「ユナ!」


心地のいいバリトンボイス。
伸びてくるのは溶けるほどの熱い肌ではなくて。



優しい春の日差しのような温もりに満ちた大きな手。



その手があたしの腕をしっかりと捉まえる。


「獅子王……ラエル様?」


再び静けさと暗闇を取り戻した風景の中。

あたしを見つめる見たこともない琥珀の瞳。
揺れる黒髪から突き出た二つの金色の耳。
首を覆う金と黒のたてがみをしたモザイク壁画にそっくりなその人は。



自信に満ち溢れた笑顔を向けてあたしを抱き寄せた。



「オレを間違えるな……」


はにかむように目の前で笑う人はまぎれもなく。



『あたし』だけが知っているシュリその人だった。