女の子だったら、誰でも一度くらいは想像する。


白いウェディングドレスに。
長いベール。
真っ赤に伸びるヴァージンロード。
教会の高い天井。
結婚行進曲を奏でるパイプオルガン。

匂い立つ花の香りに誘われて。
ゆっくりゆっくりと、あの人の胸の元へと歩み寄る。


(って、ほんとに夢になっちゃってるじゃん)


あたしは大きなため息をひとつ。

結婚式っていうのに。
あたしったら、まるでお葬式の参列者みたいじゃん。


真っ黒でシンプルすぎるドレス。
同色のベール。

挙句の果て、胸元にはあの牛顔魔族王子から貰ったネックレスが、イラつくくらいにキラキラ輝いちゃっている。

この姿に手渡された手鏡を見て、さらにゲンナリ。

真っ青なアイシャドウ。
真っ赤な口紅。
恐ろしく長い上下のつけまつげ。
古代エジプト人ばりのアイライン。


鏡の中のあたしは全くの別人。


っていうかさ、あたしの良さはナチュラルさにあるんだよ!
これじゃ、全部潰されちゃってて。
見間違えれば、痩せたパンダじゃん。