「いい子だね、キミは。
『その素直さはいじらしいけど、愚かだ』ね」
「えっ?」

どこかで聞いたことある台詞。

どこで聞いた?
どこで――


「憐れ男の最期を見せてあげるよ」


後ずさりするあたしの腕を掴んで引き寄せたあと。
シュラは胸の中から取り出した短剣をシュリに向かって投げつけた。
剣は吸い込まれるようにシュリに向かい。
彼の肩に深く食い込んだ。

「シュリィィィッ!」

真っ赤な血がシュリの腕を伝って、袖口から流れ落ちる。
彼の体が大きく揺らぎ、その場に突っ伏した。

パチンというシュラの指の音で、どこからともなく現れた下級魔族の群れが、シュリを襲う。

「やめてぇっ!
シュリ!
シュリィ――ッ!」


叫び声が闇夜にかき消える。

あたしの体はそのまま、抱きかかえられるように宙に浮き。


シュリを覆う黒い影は、すぐに闇の中へと見えなくなった。