お城ってば、本当に無駄に広い。

「一週間もいるのに、なんで?」

あたしは迷子になっていた。

お城の中をもっと歩き回っておけばよかったと後悔。

でもさ、普通なら、どこかに番兵さんとかいてもいいのに。


今日はまったくいない。


嵐の前の静けさみたいに、ものすっごく静かで寒気すら感じる。

城の中なんだし。
女王様の癒しの力で守られてるんだし。


不安になることなんて、なんにもないはずなのにあたしは不安になってる。

怖くてたまらなくなってる。


なんで?


きっと、シュリが笑ってなかったせいだ。

彼が笑って『おやすみ』と言ってくれなかったせいだ。

彼が笑ってくれなかっただけで、こんなに胸が苦しい。


「なにをやってるんだ、そんなところで?」


思いかけずに響いたバリトンボイス。

あたしは、一も二もなく振りかえった。

腰に手を当て、呆れ顔であたしを見降ろしている黒装束の超絶美形。


「シュリ」