無視すればいい。
幻聴だと一蹴すればいい。
でも、無視できない。
不安になって、疑いたくないのに疑惑の欠片が胸に刺さる。
これはもう一人のあたしの声?
頭がクラクラとしはじめる。
まわりがぼんやりかすみはじめ、あたしは額に手をあてた。
このままじゃ、のぼせちゃう。
はやく出て、冷たい水でも飲まなくちゃ。
頭を抱えるように、大浴場を後にする。
同じくらい広い洗面所兼脱衣所に向かう。
大きな鏡の前に立った直後。
あたしの頭に、大きな金タライが落ちてきた。
そんな衝撃が走る。
(なんなんだなんなんだなんなんだ!!)
いったいあたしはどうなっちゃったの?
お風呂に入る前とは明らかに違う。
これはなんなのよ!!



